切っても切れない年金と保険の関係。まずは年金の基礎を押さえよう

前項でも触れたとおり、死亡保険金を試算する場合に重要となるのが公的年金です。「年金?生命保険の死亡保障と老後の年金にどんな関係があるの?」と思った方。もしいらっしゃったら、ぜひぜひこの続きを読んでいただきたいと思います。

 20歳から60歳のすべての人に加入することが義務づけられている国民年金。それに職業によって厚生年金、共済年金という、いわゆる年金の二階建て部分が存在します。会社員は厚生年金、公務員は共済年金で、どちらも国民年金を含めて給与から天引きされる形で年金を納付しています。

生命保険文化センター「ねんきんガイド」より

一方自営業や専業主婦、学生が加入する国民年金は持参や振り込み・インターネットなどで加入者自身が支払わなければなりません。会社員や公務員の人は給与明細を見ない限りはそれほど意識することはないかもしれませんが、自営業の人は、自らの手から出ていく保険料に負担感も大きいのではないかと思います。

 社会保険庁の問題など、国民の多くが現在の年金制度に不安を感じている昨今。「将来年金は支払われなくなる」などといった事実に基づかない流言もあり、国民年金の納付を拒否する人も出てきているのが現状です。

しかし、現在の年金のシステムは改善が必要だとはいえ、決して反故にされるものではなく、軽々しく年金加入者の権利を損なうことは国としてできません。老齢年金を受け取るには、原則25年(300月)以上の加入期間が必要ですが、これも現在政府で緩和(期間短縮)の方向で協議が進められています。

 それならズバリ、公的年金は払った方が得なのか損なのか? 老齢年金受け取り開始後間もなく亡くなってしまった場合や、年金が受け取れない海外に移住してしまった場合など、ちゃんと年金を納付した人が損になる場合はとてもレアなケースです。

もしあなたが老後、ほぼ平均寿命まで生存し、年金を受け取ったとするならば、ほとんどの場合、年金の納付額よりも受取額の方が上回ることになります。そして今ここで生命保険の死亡保障と併せてぜひ注目していただきたいのが、意外と知られていない年金の残り二つの機能、遺族年金と障害年金です。

 その名の通り遺族年金は年金加入者が死亡した場合に遺族が受け取ることができる年金です。老齢年金のような加入期間の制限はなく、加入者の遺族に支払われるシステムですので、国が用意している生命保険といえばわかりやすいかもしれません。

もし一家の大黒柱を失った場合、この遺族年金の意義は大きく、生命保険の死亡保障の金額を試算する上でも大きな収入のよりどころとなります。国民年金、厚生年金、共済年金で支払い対象や期間が大きく違うので、生命保険の死亡保障額を検討する際、どの年金に加入しているかで設定額も変わってきます。

 そしてもう一つが障害年金です。こちらは生命保険の高度障害保障のように年金加入者本人が障害を負った場合に受け取れる年金です。これも遺族年金と同じく、障害を負ったときに加入している年金の種類(国民、厚生、共済)によって年金額が大きく変わってきます。

 このように公的年金には、生命保険の機能とオーバーラップする部分があります。もちろん死亡保障や高度障害保障にとどまらず、公的老齢年金が老後の生活において大きな役割を果たすことは言うまでもないこと。年金のすべてが保険と深く関わっています。

自分がどの年金に加入していて、実際にどれぐらいの年金を受け取ることができるのか。それが分からないまま保険を設計することはそれだけロスの多く、実の伴わない設計になってしまいます。次項でさらに詳しく年金と保険の関係を掘り下げていきますが、あなた自身の年金もぜひシミュレートしてみてください。