公的医療保険制度についても知っておこう

公的医療制度も職業によって違う

公的年金制度をある程度理解できたら、次は公的医療制度です。死亡保障に必要な保険金額がイメージできたら、今度は当然病気や怪我をしてしまったときの保障がどれだけ必要かの情報が気になるはず。

医療保険・がん保険は今や、保険会社のラインナップの中でも大きなポジションをしめる商品。その保障内容を吟味する際にどこに注目すべきかのヒントが、この公的医療保険制度に隠されているともいえるのです。

さて公的医療保険制度とは何でしょうか?いわゆる「健康保険」と思えば良いのですが公的医療保険制度はこれも基本的に職業によって種類分けがされています。企業に勤める人が入る「健康保険」(協会けんぽと組合管掌保険の2種類)、公務員や私立学校の教職員が入る「共済組合」、船舶の船員のための「船員保険」そして自営業や農林漁業従事者が入る「国民健康保険」です。そしてこういった枠とは別に75歳以上の高齢者のための後期高齢者医療制度があります。

 国民皆保険制度がしかれている日本では、ご存じの通り原則誰もがこれらの保険のいずれかに加入しています。そして実際の医療費の自己負担は、一部の例外(※1)を除いて、後期高齢者医療制度で1割、それ以外の保険では本人、扶養家族ともに3割となっていて、公的年金制度とは違い、自己負担率という意味では職業による差はありません。

問題となるのはこの3割という負担で実際どんな病気に対応できるかということでしょう。昔ながらのスタイルの営業を行う募集人にかかると、「ガンや脳梗塞など、長期の入院になれば医療費の負担は莫大ですよ!」と脅されて思わず高額の保険に入ってしまった人は結構今でもいるのではないでしょうか。

高額療養費を知っていますか?

 しかしここで、当然話題にあがるべきなのがこの高額療養費制度です。高額療養費制度とは、1ヶ月の間に自己負担額8万1000円を超える医療費が必要となった場合、ある計算式に基づいて、医療費の自己負担額を一定以内にとどめる制度です。

例えば胃ガンで1ヶ月間入院した場合の医療費と紹介してみましょう。1ヶ月間のすべての医療費が180万円だったとします。そうすると3割の自己負担率を考えると、本人の負担額は54万円となります。

しかしこれをそのまま負担するわけではないのがこの高額療養制度の良いところ。実はこんな計算式が成り立ちます。

8万1000円+(180万円-26万7000円)×1%

=9万6330円(実際の自己負担額)

上の26万7000円という数字は8万1000円を超えた場合につけられる控除額で、つまり8万1000円〜34万8000円の場合は、自己負担額は一律8万1000円と言うことになります。

34万8000円を超えた場合もかかった医療費の最後に1%がかけ算されていることに気がつくはず。この例の180万円という高額な医療費の場合でも8万1000円を超えるのはわずか1万5330円。医療費自体はこの制度によって、自己負担額を相当抑えることができるのです。

保険の見直しを行う際、高額な医療費は補助が出ると理解しておけば、保障金額の掛けすぎを抑えることが可能です。この制度は必ず覚えておいてください。

 ただし、この制度では差額ベッド代などの負担はまかなわれておらず、見舞いに通う家族の交通費には適用されません。働き手が入院した場合は、収入にも影響することになりますので民間の医療保険によるフォローも検討する必要はあります。いざという時の高額な医療費を恐れるだけでなく、公的医療保険制度をしっかりと活用する術も覚えておきましょう。

 この制度の申請を行うのはそれぞれの公的医療保険(協会や市区町村役所)の窓口となりますが、制度の内容は同じですので、公的医療保険加入者ならば誰もが利用できます。以前は病院窓口で支払を済ませてから申請して高額療養費を受け取る形でしたが、今では入院中にあらかじめ公的医療保険の窓口に申請すれば、退院時には高額療養費でまかなわれる部分を負担することなく本当の自己負担分のみの支払いで完了させることもできるようになってきています。

※1 0歳児〜小学校入学前までは2割負担、70歳〜74歳までも2割負担、また70歳以上でも夫婦二人の収入が520万円以上の場合3割負担となります。