生保商品研究Part.4 利率変動型終身保険

 貯蓄性の高い保険として養老保険や終身保険があることを説明してきました。保険会社は保険料の一部を運用することによって、契約者の有利になるようお金を増やしているのです。

この運用益を見込んであらかじめ保険料から割り引く利率のことを予定利率と呼ぶことも前述したとおりです。

しかし保険などの長期のスパンの金融商品の場合、契約時とは、金利や市場の動向が大きく違ってくることもあります。保険会社が市場の動向や金利の下降によって予定していた運用益を得られないことを「逆ザヤ」といいます。

例えば予定利率3%の養老保険を販売していたのに、その満期時に保険会社の運用益が3%に達していなかったら。逆ザヤとなった保険会社は大きな支出を迫られることになります。実際このようなことが起こって、バブル以降破綻した生命保険会社がいくつか出たのです。

 もちろん保険会社の予定利率は相応に手堅いもので、そう簡単に逆ザヤに陥ることはありません。しかしそんな手堅い予定利率の設定も吹き飛ばしてしまうような市場の動きがあったのも事実。

それがバブルと言われた経済現象です。バブル期には保険商品の予定利率は6%のものもざらにありましが、当然バブル以降、保険会社は予定利率を大幅に下げて保険を販売しています。現在の保険商品の一般的な予定利率を見ると1%〜1.75%と言ったところ。それでも銀行金利よりは上回っているので貯蓄型の保険に注目が集まっているのです。

 そこで保険会社は低く設定されている予定利率をより魅力的なものにするために市場に連動した利率変動型商品を開発しました。それがここで紹介する「利率変動型終身保険」です。通常の終身保険と変額保険との違いを表にまとめてみましょう。

  積立利率変動型終身保険 終身保険(無配当) 変額保険(終身型)
解約返戻金リターン 上昇の可能性有り 固定 上昇の可能性有り
保険金額リターン 増加の可能性有り 固定 増加の可能性有り
解約返戻金リスク 保証有り 保証有り 保証無し
保険金額リスク 保証有り 保証有り 保証有り

 リターンとリスクを確認してみてください。この保険の特徴は金利や市場動向に応じて予定利率は年ごと、あるいは月ごとに見直されますが、契約時に設定された最低利率は保証されるかたちになります。

つまり、見直される利率が最低保障よりも高くなった場合はそれに応じて保険金額、解約返戻金が増え、利率が最低保障よりも下がった場合は、最低保障利率が守られるので、リスクはありません。

死亡保険として支払われるまで、あるいは解約によって解約返戻金として支払われるときまで、利率の変動は最低保障より上昇した場合のみカウントされ、下回った場合はカウントされないという契約者にとって有利な条件になっており、ここが変額保険と違うポイントです。実際に構成を見てみるとこんな感じです。

 そしてこの利率変動型の保険は、扱う保険会社によって利率が違ってくることも注目してください。これはそれぞれの保険会社の運用実績による違いです。保険会社が保険料を運用する場合、安全性、収益性、換金性、公共性が高いものへの運用が義務づけられています。最低利率の高低はその保険会社の運用の上手さも影響していますので、よく吟味して保険会社を選ぶことも必要です。

生保キーワード辞典

【逆ザヤ解消】

バブル以後、保険の新商品が次々と開発され、生保取扱者から転換を勧められたと言う方は多いのではないでしょうか。新しい医療保険や、定期付終身保険など、魅力的な商品が紹介され、実際に転換した方もいらっしゃるはず。

布かし実はこれ、保険会社には「逆ザヤ解消」というもう一つの目的があったのです。新しい保険は魅力的ですが、予定利率が大幅ダウンしていることに注目してください。あなたの保険はいつの間にかずいぶん低い利率の保険に改められてしまっているかもしれませんよ。