実際の年金受取額シミュレーション/厚生年金編パート2

 さすがは国民年金と較べると複雑な厚生年金。ざっと計算方法を解説するだけで一項目分使い切ってしまいました。しかも頭の痛くなるような計算式ばかりでわかりやすさを目指したはずのこの記事なのに、読者の皆さんにもさぞ「???」な思いをさせてしまったことと思います。

ここからは気持ちを切り替えて厚生年金のシミュレーションをスパっとシンプルにわかりやすくやってみたいと思います。

 そこで厚生年金加入者のモデルとしてAさんに再登場願います。Aさんのプロフィールを思い出してもらうと、年齢は30歳で会社員、奥さんと息子さんがいるというところまでご紹介していたと思います。

年金をシミュレートするにはもっと細かい情報がいりますので補足を少々。奥さんは28歳でお子さんの出産があり勤めていた会社を27歳で退職。現在6ヶ月のお子さんの育児に専念なさっています。

 Aさんの年収は現在480万円ですが、業界標準の給与の伸び率でおよその平均標準報酬額を計算すると40万円という数字が出てきました。これに前項で使った計算式をあてはめていけば、老齢厚生年金、遺族厚生年金、障害厚生年金が導き出せるはずです。

しかし実はもっと簡単に導き出す方法があるのです。老齢厚生年金を導き出す場合、22歳で就職し60歳まで働いたと試算すると、38年(456ヵ月)で平均標準報酬額のおよそ30%が老齢厚生年金の報酬比例部分ということになります。つまりこんな感じです。

Aさんの場合65歳で受け取れる老齢年金は

40万円×30%×12ヵ月+定額部分(老齢基礎年金)+加給年金(39万6000円)

=144万円+75万2495円+39万6000円=258万8495円

月額で21万5700円という数字が出てきました。

また2年後、奥さんが65歳になることで、奥さんのための加給年金の給付が終わりますが、奥さん自身の老齢基礎年金の給付が始まり、月の収入はさらに3万円以上アップすることになります。

こんな感じで老後の収入を導き出し、さらに貯金や保険でフォローしていくのが老後のプランの立て方です。続いて遺族厚生年金も見てみましょう。

 こちらは前項でも触れたとおり、報酬比例部分の計算は平均標準報酬額15%で考えます。しかしここで言う平均標準報酬額は業界の平均等で予想するのではなく、Aさん自身が働き始めてから亡くなるまでの収入の平均です。ちょっとチェックするのがやっかいでしたが、入社8年目のAさんの平均標準報酬額はおよそ33万円でした。これで厚生遺族年金を計算すると

33万円×15%×12ヶ月+遺族基礎年金(子1人102万円)=161万4000円

月額13万4500円の遺族年金が受け取れる計算です。お子さんが18歳になると遺族基礎年金が終わりますが、中高齢加算(年額59万4200円)が奥さんに給付されます。

※障害厚生年金も同様に平均報酬額から求めることができますので前項の式で試算してみてください。

 このように国民年金より、かなり有利な厚生年金ですが、遺族厚生年金や、障害厚生年金は、特例もありますが、原則厚生年金加入中の人しか対象となりません。退職などで受給資格を失った場合はこの点に注意してください。

 また、厚生年金加入者でも障害基礎年金、遺族基礎年金の受給資格と同じく、保険料納付済の期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あることが条件となっています。

年金に加入せず何年も過ごし、会社に就職できたので遺族厚生年金でもう安心とはいきませんのでこちらも注意してください。そう言った意味で、厚生年金加入前でも、国民年金にしっかり加入していることが後々功を奏することもあると言うことなのです。